漏気(ロウキ)とは
「ロウキ」とは
「ロウキ」という言葉をご存じでしょうか。
建築関係者であれば聞いたことがある方も多いのですが、そうではない方に「ロウキ」という言葉を使ってもあまりピンときていないことが多いのでご説明しようと思います。
「ロウキ」は漢字で書くと「漏気」。
「ロウキ」という音だけを聞くとピンとこない方でも、「漏気」という漢字をみるとなんとなく意味が分かるのではないでしょうか。
まさに読んで字のごとく、「空気(気体)が漏れる」という意味です。
ただ「空気(気体)が漏れる」という同じ現象でも「漏気」という硬い表現の言葉を使う機会はあまりなく、一般的には「空気が抜ける」と表現されることが多いと思います。
例えば、ふくらましていたはずの風船がしぼんでしまっている、自転車のタイヤが知らないうちにぺったんこになってしまっている、といった現象も「漏気」といえばそうですが、普通は「空気が抜けた」といいますよね。
「漏気(ロウキ)」という言葉が一般的にはピンとこないというのは、あえてそんなわかりづらい硬い表現を使う必要がないからでしょう。
・「ロウキ」=「漏気」・・・空気(気体)が漏れるという意味
・普通の人は「空気が抜ける」と表現する (例:風船の空気が抜ける、自転車のタイヤの空気が抜ける)
さきほど建築関係者であれば聞いたことがある方が多いと書きましたが、それはなぜかというと建物の性能に関することに使われる言葉だからです。
建物の性能といっても多岐にわたり、様々な性能が求められています(耐久性、意匠性、省エネ性、安全性、快適性など)が、そのなかで特に「漏気」と関係がある性能が「気密性(能)」です。
「気密性(能)」とは建物の外皮(外壁や屋根などの総称)を通して空気(気体)が漏れるのを防ぐ性能のことを指します。ただしその性能は建物が人の手で作られるものである以上完璧なものにはならず、多かれ少なかれ存在するすきまから空気(気体)は漏れていきます。その現象のことを建築関係者は「漏気」と表現します。
ちなみにこれまでの話から、「漏気」はある空間から空気(気体)が出ていくことだと理解してしまうかもしれませんが、出ていくことに限るわけではありません。空気(気体)が入っていくことも含めて「漏気」という言葉は使われます。
それではなぜ建築関係者は、そんな「わかりづらい」「硬い」表現をあえて使うのでしょうか・・・。
そのほうが建築のことをよく知っている専門家のようだから? その面は・・・あるかもしれません。
「空気がたくさん抜けています」というよりは「漏気が多いです」というほうが専門家ぽいですよね。
ただ、それだけでもないんです。
実は先ほどから「漏気」について、くどいほど「空気(気体)が漏れていくこと」と表現しているのですが、気付いてもらえていますでしょうか。
「漏気」の「気」は「気体」の「気」。
「空気」の「気」とは言い切れないんです。
ここでは「空気」という言葉の定義のはなしをするわけではありません。
「空気」はいくつもの「気体」が混合されたものだということなどについてはほかのところで調べてください。
詳しく解説されているページ等がたくさんあります。
「空気」というとたいていの人は何の変哲もない空気、つまりきれいな空気をイメージしてしまいます。
そのイメージを持った人に「漏気」とは建物から外壁などを通って空気が抜けていくことなんですよ、と説明をしても「そうなんだーふーん」と言われてしまうだけです。その人の中ではきれいな空気が出入りしていくイメージでしかないのですから、換気扇を回しているのと変わらないですからね。
でも実際はちがいます。まず大きなイメージの違いは水蒸気という「気体」。
「空気」という言葉に含まれているものということもできますが、当たり前すぎてたいていの人は梅雨や夏の蒸し暑い時期や冬の窓ガラスの結露を見るまでそこにあったことすらイメージしていないことが多いのです。
または車からの排気ガスという「気体」。こちらも「空気」という言葉に含まれるイメージは全くありませんが、交通量の多い道路に面している建物では確実に「空気」とともに出入りしているでしょう。
このような「空気」に対するイメージの違いが大きいから、建築関係者は普通の人が「空気が抜ける」と表現するところをあえて、「漏気」という「わかりづらい」「硬い」言葉で表現しているのです・・・。
・・・いえ、少し言い過ぎました。
こんなことを考えながら「漏気」という言葉を使っている人のほうが実際は少ないと思います。
建築業界でそう呼ばれているから、という理由で使っているのが大多数ではないでしょうか。
実をいうと特に日本においては、建物の「漏気」を気にする建築関係者はほぼ住宅関係者に限られます。
理由は様々ありますが、オフィスビルなどの大型建築の「漏気」に関しては造る側ですらほとんど気にしていないのが現状です。
また、住宅関係者に関しても日本では「気密性」に対しての明確な基準というものがなく、「基準がないから気にしない」という方も一定数います。
つまり「漏気」という言葉を使う建築関係者でも、それについてよくわかっていない人がかなりいるということは知っておいた方が良いでしょう。
こちらのブログを読んでいただいた方には、「漏気」がただの「空気が抜ける」現象ではないことがわかっていただけたのではないでしょうか。
さまざまな気体が空気とともに出入りしていく「漏気」は、その程度によっては建物にとって大きなリスクになりかねません。
「漏気」という言葉を使いながらも、そのことについてよくわかっていない建築関係者が多くいる以上、「専門家に任せているから大丈夫」と考えていると痛い目にあう可能性があることは知っておいてください。
・「漏気」は建物の「気密性(能)」に関わる。
・「漏気」の「気」は「気体」の「気」 (水蒸気、排気ガスなども空気とともに「漏気」する)
・「漏気」という言葉を使う建築関係者でも、「漏気」=「空気が抜ける」と考えている人はいる。
・「漏気」は建物にとって大きなリスクになりうる。