大阪府交野市内での気密測定(中間検査)

大阪府交野市内 気密測定(2023年10月23日)

C値1.0以下にしたい。それがお施主様のご要望です。」

「これまでの実績値は?」

「1.5前後というところでしょうか・・・。」

こんなやりとりがあったのは検査当日からさかのぼること約1カ月。
ハイシマ工業㈱を含めた今回の工事業者の方との会議の場でした。
(ハイシマ工業㈱は私が気密測定業務を請け負っている埼玉県の会社です。)

今回の案件、ハイシマ工業㈱が請け負い、検査当日は私が気密測定に伺うというもの。
その場合は通常、私の出番は検査当日のみ、なのですが今回は特殊な事情があり会議にも駆り出されました。

今回の案件は、全国展開する会社の本社が関わる案件、ということでした。

C値1.0以下・・・

私の会議後の率直な意見としては、「C値1.0以下は無理かも」でした。

気密性能を高めるために大事なことは、
いかに切れ目のない設計をするか、いかにすきまのない施工をするか、いかにすきまを見つけて対処するか、
です。

それには、
設計する会社が気密に配慮した設計をできること、作業員が気密施工に慣れていること、きちんと気密測定を行うこと、
が必要です。

これらをきちんとできている業者であれば、C値0.5~1.0の範囲は十分可能です。

今回の場合、実績値がC値1.5前後。申し訳ないですがものすごく微妙な数字です。
悪い!とは言い切りませんが、良くはない。

私の推測ですが、この時点で「気密がとりやすい設計にはなっていない」はず。
そして作業員の方々は普段からその設計の工事に慣れているということは、「気密施工に慣れていない」可能性が高いです。
そして極めつけは、全国展開している会社の案件ということ。
安定した品質の住宅をつくるためにこうした会社にはしっかりとした設計仕様があります。
しかしそれは現場に柔軟には対応できないという裏返しでもあります。

つまり今回は、ほぼ気密測定ですきまを見つけて対処することだけで、C値1.5前後から1.0以下に持っていきたいという話になります。
・・・正直に言ってかなり厳しいお話です。

検査日当日

そして検査当日。
午後からの検査でしたが結構前に現場に到着しました。

・・・なんだかものすごい数の人が現場にいました。さすが本社案件。

それにしても人が多い、多すぎる。
さすがにおかしいなと思い様子をうかがっていると、天井の防湿気密シートがまだ施工中。

・・・まだできていない。

午前中に仕上げるつもりが長引いていまして、午後いちにはなんとか、とのこと。

こりゃあ無理だ。
いい数字が出るわけがない。

私は確信せざるを得ませんでした。

検査するまでもないよなあ、と思いつつ準備をしているうちにシートの施工は終わりました。
まあ、検査すらできないという最悪の事態は免れたわけです。

そして、たくさんの工事関係者(15人はいたと思います)に見守られながら検査を始めますが、
そんな期待した目で見ないでほしい・・・たぶん良くない数字だから。

測定した結果、C値は2.4でした。

原因はいくつかありましたが、特に気になった点は以下の通り。

壁のシートのテープは端がしっかり留まっておらず、施工中のキズや破れが多数。
天井のシートは破れなどはないものの、ケーブルの貫通部まわりの処理がとにかくおろそかでした。

さて、この根本的な原因は何でしょうか。
・・・もはや考えるまでもありません、明らかに時間的な余裕がなかったことです。

切れ目なく、すきまなく、破れなく

気密というのは、切れ目なく、すきまなく、破れなく、ということが非常に重要です。
なんなら気密の全てと言ってもいいくらいに。

「切れ目なく」は、いかに気密の切れ目がない設計をするか。
「すきまなく」は、いかに設計通りのすきまのない施工をするか。
「破れなく」は、いかに施工時に気密を破らないでいられるか。

私の考えた気密の3つのキーワードです(笑)

この中でも、「すきまなく」「破れなく」をなくすことはほぼ無理です。
いくら気を付けたつもりでもテープが浮き上がってきてすきまができてしまうことはありますし、気密シートに資材をぶつけて破ってしまうことはありますから。

しかしそれらを最小限にすることはできます。
テープが浮き上がっていれば貼りなおし、気密シートを破ってしまえば補修すればいいんです。

そのために必要なのはそう、それらを確認する目と確認できる時間的な余裕です。

今回、気密がとれるようになってから気密測定を実施するまでの時間的余裕が全くなく、だれの目も通らない所謂ぶっつけ本番という状況でした。
これでは気密の良い数字など望むべくもありません。

今回私のできることは多数の漏気箇所を指摘して、石膏ボードを施工するまでにしっかりと対処してもらうように話をすることだけでした。
C値1.0以下とすることは非常に難しいですが、あとはしっかりと指摘した漏気箇所を直してくれることに期待するしかありません。