食器棚の引き出しの先板(向こう板)の交換

少しずつリペアの依頼が増えてきた今日この頃。
今回お問い合わせをいただいたのは、食器棚の引き出しの先板(向こう板とも言います)が何かしらの理由で反ってきてしまい底板からも外れてしまったものを修理できないかというものでした。

お送りいただいた写真を確認したかぎりでは、先板にかなりの反りがでてきてしまっておりその反りだけを戻すことは難しいと思いましたので、お客様に引き出しの一部解体と先板の交換対応になる可能性が高いことをお伝えするとともに、解体にともなってほかの部材を傷めてしまう可能性も考えられるためメールでのやり取りだけでははっきりとした見積もりを出すことはできないと考え、お宅へのご訪問による見積もりをご提案いたしました。
(川西市内からのお問い合わせであり、こちらからのご訪問提案でもあったので見積もりに際しての出張料はゼロでの対応です。)

後日お宅をご訪問し実物を確認したところ、各箇所はピンタッカーや通常のタッカーと接着剤を併用して接合してあるのみで交換する先板以外は傷めることなく解体および交換が可能だと判断できましたので、その場で見積金額をご提示してご納得いただきましてご依頼いただく流れとなりました。

まずは完全に反ってしまった先板を解体していきます。底板との接合はすでに外れているので側板との接合面を外すのみになります。
ピンタッカーのぎりぎりのところと先板と側板との接合面に慎重にのこぎりを入れていくと接着材の力が弱まり外れました。
もう片方も同じように考えていましたが、作業を始める前に少し力を入れただけでいとも簡単に外れてしまいました。もともとの接合の甘さが目に余ります。

解体してみて、なぜこんなにも先板が反ってしまい底板から外れてしまうまでになってしまったのかがよくわかりました。
まず使用されている木材ですが、木質チップを接着剤で固めたいわゆるMDF材を使用しており湿気には非常に弱いです。
また各箇所の接合が全体的に甘く、採用されている接合方法自体がかなり貧弱です。

次の写真を見てもらえればわかりますが、底板と先板の接合方法はタッカー+接着剤で、しかもタッカーは底板を軽くかすっているだけで接合にはほとんど意味をなしていません。
かといって接着剤もしっかり塗布されているわけでもないため、先板が反り始めて少ない接着剤が外れてしまってからは反りに対して抵抗する力も特にかからずどんどんと反りがひどくなる一方だったのでしょう。

話がそれてしまいましたが、無事にほかの部材を傷めることもなく解体ができたので、交換用の新しい先板の準備をしていきます。
今回使用する木材はメラミン化粧板という材料。日ごろから木材の在庫をたくさん確保しているような業者ではないので、今回はホームセンターで購入した棚板用の材料を使います。
古い先板でおおよそのサイズの型をとって新しい先板を切り出した後、底板とそれを支える補強桟がはまる箇所に溝を掘っていきます。実はお客様からのご要望で補強桟を追加してほしいと承っていましたので、既存2本以外に3本追加することにし、それらがはまる溝も用意します。

全てがきっちりとはまる溝を彫り終えて、その溝にしっかりと接着剤を塗布してから接着し、一晩圧着したあとさらに釘を打って強固な接合とし、すべての交換作業が終了しました。

Before

After

作業手順

先板解体 → 先板切り出し → 補強桟3本切り出し → 先板溝彫り → 接着 → 釘打ち

費用

9,500円